非常勤講師と受験生
学校から十五分程車を走らせた所に篠崎海岸はあった。

そこの近くの駐車場に車を止めてから、車のバックドアを上げて、先生の足の間に私は座った。

車の外は海の潮の匂いが漂っていた。

「なぁ、葵。俺と付き合うの高校卒業してからじゃなくて、もう少し早めにしねぇーか?」

「そうですねー、中学卒業してからとか?」

「じゃなくて、今からがいい。」

「ふぇッ!?今からですかぁ?」

「そう、今から。」
「他の先生とか生徒には絶対秘密で。」

「はぁっ!?無理ッ!絶ッ対無理です!!」

「えぇ~、そこを何とかお願~い!」

急に変な事を言い出すからビックリしたではないか。

でも、先生は子犬の様にしょんぼりしている。

仕方ない。そう思った私は…。

「仕方ないですねー、今日から付き合いましょう。」

「ほんとッ?!」

「ですが、条件があります。」

「条、件…?」

「そうです。まず一つ目は篠中やその他近辺では付き合っている事は絶対に秘密です!」

「ふむふむ…。」

「そして、二つ目。学校やその近辺ではイチャイチャは絶対に禁止です!」

「えええええ!?!?!?」
「何で!?何でイチャイチャ禁止なの!?」

「ダメです!イチャイチャしていると私達の関係がバレるでしょう!!!」

「あぁ、そっか…。」

「それから…。」

「それから?!多くない?てか、多すぎる!!!」

「そんな事ないと思ったんですけど…。」

しゅんとなってしまった私に先生は、ヨシヨシと頭を撫でてくれた。

「多すぎるって言ってごめん、俺の事を思って言ってくれたんだよね。」

「いえ、熱くなりすぎた私の方こそごめんなさい。」

「いや、いいよ。それよりさ?俺からも約束事決めても良い?」

そう言われたので「いいですよ。」と快く了承した。
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