一輪の花

第一話〜ルピナス

「そういえばさ。」
と、わざわざ僕の家に来てゲームをしに来ている瑠奏(るかな)が声を上げた。
無視をしても良いのだが、何となく僕も話をしたかったので読んでいた本を一旦閉じて返事をした。
「ん、なんだ?」
「前々から気になってたんだけどさぁ。
机の横にある棚の上においてある花って何?」
「あれは、ルピナスって花だったかな。」
「ルピナス…か。
確か花言葉は……。
、でもなんで1輪だけ?」
「大切な人から貰ったんだ。
なんで一輪だけ…か。
う〜ん、、、話せば長くなる。」
「長くなる分には良いんだけどさ。
…ただ、日向(ひゅうが)君が言いづらいなら言わなくても良いよ。
例えば、前に言ってた“あまり言いたくない過去”に関すること…とかね。」
「あぁ。そう言ってくれると有り難いよ。
けど、瑠奏になら言っても良いかな。」
「え?それってどういう…。」
「んにゃ、なんでもな〜い。」
「え〜、教えてよ。」
「あ、雨だ。」
中身の有りそうで無い話をしている中、窓から外を見ると雨が降ってきた。
それも土砂降りだ。
この時期だから夕立だったら良いのだが雲を見る限りそうでもないらしい。
長く降りそうだな。
「え〜そう言って話を逸らさないでよ…って本当だ。」
「瑠奏、帰らなくて良いのか?」
「か弱い女の子をこの雨の中で帰らせると?
雨だと濡れるし、寒いし、暗くなるし。
そんな中でも、帰らせるんだ。
ふ〜ん、、、日向君ってそういう人だったんだ〜。」
「いや、そういうことじゃなくてな?」
ふむ。
困ったな。
この雨が止むまでとなると、時間が遅くなりそうなんだよな。
僕の親と瑠奏の親は仲が良く、今は子供を置いて両家族の両親が旅行に行ってる。
なぜ、子供を置いていったのかと言うと、
“若いもの同士だけであればこれまで以上に仲良くなれるだろう”
だ、そうだ。
そんなこんなで今家には瑠奏と僕の二人だけと言う訳だ。
男子であればこんな状況は羨ましい限りなのだろうが、張本人である僕からすれば最悪でしかない。
とはいえ、たしかにこの中で帰らせるのは流石に危険…か。
「あ〜、分かったよ。
止むまでは家に居ていいよ。」
「やった〜♪」
「はぁ…。」
「で、こんな状況なんだしさ、無理にとは言わないけどさ教えてよ。
あのルピナスの話を、さ。」
「まぁ、この状況じゃいつか話にも尽きるしな。」
「そうだよ。
それに、私もゲームに飽きてきたしね。
日向君も本ばっか読んでたら本に穴が空いちゃうよ?」
「開かないから安心しろ。」
一体、どんな理屈だよ。
「え〜」
「まぁ、でもそうだな。
つまらない話だけど。」
「それでも良いよ。」
そんな返事をしながら瑠奏は笑顔を向けてきた。
…この笑顔はずるい。
「…あの日も、こんな風に外は土砂降りだった。」
そう言って、僕は話しだした。
あの日…あの過去の話を。
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