華、りんごマスターへの道!
今日は休日で、私の家で部活のミーティングと親睦を深めることになっていた。

ところが、みんなより早くに来た副部長が私のもとに、りんごをどっさり持ってきた。
その数なんと十二個!

「田舎からもらってきたんで、華部長、りんご切りお願いしまぁす!!」

「え、なんで私!!?」

思わず声も上ずる。

「え〜?だって部長、栄養士志望でしょ?卒業して栄養士学校行くんなら、りんごくらい、ねえ…」

彼はニッコリ笑って、大袋に入ったりんごを私に手渡してきた。

「栄養、残るようにお願いしますね!大会近いし、みんなに栄養摂ってもらいたいですもんねっ!!」

「……。」

「あ、約束の時間まであと五十分ですね〜。じゃ、よろしくっ!俺は部長の買った漫画、リビングで借りてますから!」

…全く、幼馴染だからって…覚えてなさい……!!


やるのよ、とにかく…!
やれば出来るの!!

山積みのりんごを前に、ひとり精神統一をするため深呼吸。

じっと睨んでりんごを一つ、手に取る。

まずは一個目…
…皮が厚いかな…こっちは薄い……。あ、塩水忘れちゃった、色変わっちゃう…!

二個目…
あ、ピーラーがあった!よぉし、これでっ…!こんなペースで間に合うかな……

三個目…
皮は良くなったけど、切り方よね…。大丈夫かな、これじゃ大きい?

四個目…
…これ、減ってる??減ってない気がする……そんなわけ無いか。

大丈夫、頑張れば減っていくんだから…!

五、六、七、八……

もうすぐよ…頑張るのよ私…!私は部長なんだから…!!

手が…手が震えてきたっ…でも、みんなの為…!!

あと…一個……!


「華部長、お疲れ様でした、ありがとうございま〜す!!」

今日来られる部員、全員が集まったミーティング。

「はあっはあっ…なんとか間に合った……あ、お茶忘れた!」

「部長、お手伝いします〜!」


部員の子と二人、リビングに戻ると、

「あ〜ズルいっ!!私にもくださぁい!!」

もうすでに残り少なだったらしい。

部員ちゃんは持っていた数人分のコップを置くと、すぐにりんごに向かって飛んでいった。
そして……

「部長、副部長、ごちそうさまでしたっ!」

「えっ……」

もう、一つも残っていない。私の分すらも…

「早くしないと色が変わるからね〜。いやあ、美味かったなぁ!」

呑気に言う副部長。
何も知らない部員たち。
私は副部長の彼を、みんなに気付かれないように、キッ、っと睨みつけた。

「…本当に、覚えてなさいよ…!!」

呟いた私に気付かないのか、副部長は一言。

「あ、華部長、ミーティング後にりんご、また渡しますんで。まだありますよ〜!」

私はがっくりとうなだれた……
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