パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
***
 
 帰りの車のなかで、わたしはずっと黙って、ただぼんやりと外の景色を眺めていた。

 お祖母さんの話とネックレスが、ずしりとわたしの心にのしかかっていた。

「どうした。そんなに押し黙って」
 運転中のルイは前を向いたまま訊いてきた。

「……わかりませんか?」
「祖母のことか」
 わたしも前を向いたままで頷いた。

「……だって、わたしはルイの本当のフィアンセじゃないのに。あんな大切なネックレスまで渡してくださるなんて」
「古い品だ。そんなに価値のあるものでもない」
「でも!」

 厳しい方だと恐れていたのに、別れ際にわたしに向けてくださった笑顔はまるで子供のように純粋だった。
 そのことで、彼女がどれほどお母様を慕っていたのかが伝わってきたから……

 ネックレスを渡したことを、本心から喜んでくださった彼女に嘘をついているなんて。
 どうしたって気が引ける。
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