パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます

ルイ・サイド

 今となって、わたしは薫をパリに呼んだことを悔やんでいた。

 はじめから彼女の人柄を好ましく思ってはいた。
 けれど、それは恋愛感情と呼べるようなものではなかった。

 あのときは本心から……
 ずっと、彼女の夢を応援する庇護者(パトロン)でいるつもりだった。

 まさか、薫の存在が自分のなかでこれほど大きくなるとは……

 あの日。
 朝食のとき、熱がありそうな顔をしていた、あの日。

 仕事先から数回、薫へ電話をかけたがつながらず、慌ててホテルに戻り、マスターキーで部屋を開けてもらったとき。

 真っ赤な顔をして、荒い息を吐いている薫を目にして、胸の底から突き上げてくるような衝動に襲われた。

 もし薫が自分の前から消えてしまったら。
 ロザリーのときのように。
 そんなこと、あるはずない。
 ただの風邪だ。
 そう、自分に言い聞かせても奈落の底に落ちていくような恐怖は薄れなかった。
 
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