パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「やあ、薫」
「ベルナルドさん、娘をどうかよろしくお願いいたします」
「どうぞご安心を。彼女のことはお任せください」
 ベルナルドさんはママに握手を求めた。
 おずおずと手を出し、その手を握ったとたん、ママの顔は真っ赤になった。
 彼の瞬殺力って、本当にすごい。

「薫ちゃん、向こうに着いたら、すぐ連絡してね。あー、でも本当に心強いわー。こんな素敵な婚約者がそばにいてくれるんですもの」

 わたしの両親にも、〝婚約者のフリ〟の話はしていなかった。

 パパとママのことだからあり得ないだろうけど、万が一、婚約者でもない男の人との同居を反対されても困るので、ふたりで相談して言わないことに決めた。

 彼は「さ、行くか」と、わたしの機内持ち込み用のカバンを手に取った。
「行ってきます」
 わたしはママに手を振って、出発ゲートに向かった。
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