初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
約二時間の上映が終わり、出口に向かう人の流れに沿って歩を進める。
「なかなかおもしろい映画だったな」
「そ、そうだね」
暗がりの中で動く指が気になって、集中できなかったとは言いづらい。
映画の感想を熱く語る彼に合わせて返事をしてロビーに出ると、ビニールのカバーをかけた傘を持って映画館に入って来る人に気づいた。
「降ってきたみたいだな」
「そうだね。でも折り畳み傘を持ってきたから安心して」
憂鬱そうに眉根を寄せる彼の前で、バッグから傘を得意げに取り出して外に出た。
鉛色の空を見上げて傘を開くと、彼が腕を伸ばして柄に触れる。
「持つよ」
「ありがとう」
背の高い彼が傘を持った方が絶対歩きやすい。
彼に傘を預けて歩き出す。
靴や服が濡れる雨は好きじゃないけれど、ひとつの傘に入って身を寄せ合うのは悪くない。
大粒の雨が傘にあたる音を聞きながら歩を進めていると、片道二車線の道路を横断する歩行者信号が赤になる。
「この後、駅ビルの中にある店を覗いてみるか?」
駅ビルまで行けば、雨に濡れてブルーな気分になることもない。
「うん!」
機嫌よく返事をしたそのとき、スピードを出して走るトラックがアスファルトにできた水溜りを跳ね上げた。