きみの青
 まだ講義が残っていたのに、行こうと即答したのはどうしてだろう。まったく、今日の自分はどうかしている。そして僕は彼女の黒い瞳と柔らかな響きのする声に導かれ、今こうして薔薇の香りを嗅いでいるわけだ。

・・・これがブルー香なのか。甘すぎない爽やかな匂い。

 目を閉じその香りを記憶する。そんな僕の耳を、早希の笑みを含んだ声がくすぐった。

「これでわたしたちは、香りの共犯者ね」
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