きみの青
 そこで一旦言葉を切り、でもと静かな声で続ける。

「そうだったらいいなと、わたしも思う。本当のこと、真実だけが美しいとは思わないし真実を知ることは必ずしも良いこととは思わないから」

 うんと頷きながら、早希の言葉を胸の内で反芻してみる。そこには朧げな影のようなものがあった。しかし僕が輪郭を見極める前に消えてしまう。

「モダンローズが生まれ、それ以降、人々の関心は次第に青いバラの実現へと向けられるようになった」
「青い・・・バラ」
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