きみの青
「おかしなことを考えるのね。自分以外の人間が見てる色を理解したいなんて哲学者が考えるような難題よ」

 早希は、そんな僕の手にそっと自分の手を添えて優しく笑う。その手のひらは確かな温かさで僕を包んだ。

「でもね。わたしの青と智くんの青が同じだったらいいなと思う。そうじゃないと寂しいから。わたしの青がわたしだけしか見えない、ひとりぼっちの青なんて寂しすぎる」

 彼女のその言葉に、僕の不安は次第に遠のいて、空の彼方に消えて行った。

「うん。きみの青は僕の青だ。そう信じよう」
「わたしの青はきみの青。だからそばにいてね。わたしの青をひとりにしないで」
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