きみの青
 その声に誘われるように、僕も彼女を真似て鼻を近づけてみる。今の彼女の言葉を、声に出さずに舌の上で転がす。少し低めの声で発せられたそれは、心地よい響きで僕を柔らかく絡めとり静かに染み込んで、体の奥で小さく弾けた。

「どう?感じたままを言ってみて」
「うん。でも僕にはきみのような表現はとてもできないよ」

 彼女の唇が柔らかくほぐれ、かすかな笑みがこぼれる。花を包み込むように白い手が舞う。目を上げれば、透き通るスカイブルーがどこまでも広がっていた。
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