一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

「それじゃあ、
総司がうるさいからそろそろ仕事にもどるよ」


「はい...ありがとうございます」


かよ子さんはうつむいたまま、ペコリと頭を下げる。


「あと...今週はずっと残業で
帰るのが遅くなるからかよ子さんは先に寝ておいていいからね」


「えっ?...あ、はい...」



かよ子さんは俺の言葉に少し浮かない表情を浮かべた。

そんな寂しそうな顔をされたら仕事を投げ出したくなってしまう。

俺はそっと手を伸ばすと座っているかよ子さんを後ろから包み込むように抱き締めた。


「あ、あの...神崎さん...」


かよ子さんはどうしていいか分からず
抱き締められたまま固まっている。



「あっ、あの!」

戸惑いながら後ろを振り返るかよ子さんに
「かよ子さん...」
俺はゆっくりと後ろから顔を近づけた。

かよ子さんはビックリして固まっていたが
唇が触れるまであと数センチのところで咄嗟に口を開いた。


「か!神崎さん!」


かよ子さんのいつになく大きな声に
俺はビクッと肩を震わすと
少し体を離して抱き締める手を緩めた。

するとかよ子さんは俺の腕からスルリと
抜け出し、少し距離を開けて立ち上がった。


「あ、あの... その...
夜ご飯はどうしましょう....?」

まるで避けるように距離を取ったかよ子さんに俺は戸惑いながらもようやく口を開いた。


「あぁ...
夜ご飯は作ってもらおうかな...
あまりに遅くなるようなら朝にでも食べるよ」


「はい...分かりました...」


「あぁ、ありがとう...
じゃあそろそろ行くよ」


俺はかよ子さんに拒否をされ
内心ではショックを受けつつも
それを隠すようにかよ子さんに微笑み掛けると部屋をそっと出ていった。















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