一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
第13章
それから月日は流れ...



森の中の小さなアトリエでは
かよ子の声が木々の中をこだましていた。


「天羽(あまね)ーーー!!」



アトリエから出てきたかよ子は
キョロキョロと辺りを見渡している。


かよ子の以前の長い髪はバッサリと切られ、
スッキリとしたショートボブが
秋風になびいて涼しげにサラサラと揺れる。



「もぉ、どこ行ったのかしら?」



かよ子は腰に手を置いて
ふうっと困ったように息を吐いた。


そして、再び歩き出す。



「天羽(あまね)ーーーー?」




その時、



「ママー、見て見て!!」



空から可愛らしい声が降ってきた。


かよ子が顔を持ち上げると
木の枝の上で手を振る天使のような少女が
フワリと地面へと舞い降りてきた。


「ねっ!ママ!
あまね、鳥みたいだったでしょ??」


少女は白いワンピースをヒラヒラさせながら
無邪気な笑顔をかよ子に向けている。


その少女の名前は神崎天羽。


母のように白い肌にクリクリとした瞳、
そして、肩まで伸びたダークブラウンの
少しウェーブのかかった髪の毛は
父の面影を受け継いでいた。


「天羽、木登りはパパが心配するから
ダメって言ったでしょ?」


かよ子は天羽の目線までしゃがみこんだ。


「えー?あまね、大丈夫だよ!」



「天羽が大丈夫でも、
心配症のパパが大丈夫じゃないの!」


天羽は「なんでパパってあんなに心配症なの?」と、ブゥーっと脹れっ面を浮かべる。


その問いに
「ママだって、教えてほしいわ」と、
かよ子が困った顔で頬笑む。



その時、



プップー



一台の黒い車がクラクションを鳴らして
こちらに向かって来た。


「あっ!!パパだーー!!」


天羽は嬉しそうに
ぴょんぴょんと跳ねながら
車に向かって大きく手を振っている。
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