一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
side翼

次の日
かよ子さんは俺と一緒に朝食を取った後
一旦、森のアトリエへと帰って行った。


そして俺は会社に来るなり
朝から鬼のような忙しさで仕事をこなしていた。


昨日の分の仕事が溜まっていたからだ。


しかし鬼のような忙しさにも関わらず
俺の機嫌はいつになく良い。

今までこんなにも心が満たされたことが
あっただろうか...


俺は目が覚めたときに
隣で天使のように眠るかよ子を
思い出す度に、ぎゅうっと胸が締めつけられるような感覚に襲われていた。
苦しいのに心地よい、こんな不思議な痛みは初めてだった。


彼女は今なにをしているのだろうか...


今朝別れたばかりなのに
今すぐにでも彼女に会いたい...


彼女に会って、またあの小さな体を強く抱き締めたい...


俺は締め付けられるような胸の痛みに
パソコンを打つ手を止めると
はぁっと大きく溜め息をついた。


トントン



すると、社長室のドアがノックされて
「失礼します」と総司が入ってきた。
総司は俺の顔を見るなり
ニヤニヤと何か言いたげに笑んでいる。


「なんだ?」


「いえ、朝から受付嬢が今日は社長が
笑顔で挨拶を返されたと騒いでおります。
昨日の夜は相当楽しかったようですね...」


「は?バカバカしい...
いつも笑顔で挨拶してるだろ?」


「いえ、恐いくらい無表情です!
それはさておき...
朝一、平木さんからご連絡頂いて
昨日のお話を進めていきたいとの事です。」


「そうか...良かった...」


俺はかよ子さんの喜ぶ姿を思い浮かべ
思わず頬が緩んだ。


「恋の力は偉大ですね......
あっ、そう言えば先ほど受付から連絡があって榊原グループのご令嬢がかなりご立腹な様子で受付に来られて今こちらまで
上がってきているようです」


「はっ!?早く言えよ!
この忙しいときに何なんだよ」


「面白くなってきましたね!
あっ、噂をすれば来られたようです...」


廊下でカツカツと近づいてくるヒールの音が
だんだんと大きくなっている。


俺は他人事のように楽しそうな総司を
ギロリと睨むと、面倒くさそうに椅子に深く体を預けた。


< 83 / 343 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop