僕は、美容師に恋をした
いつからだっけ。僕が、男性の格好を始めたのは。

いつからだっけ。性別に違和感を感じ始めたのは。

僕は、Xジェンダーの無性。体の性は女、性自認は無性……そして、性別表現は男。

今日も大きめのメンズの服を着て、とある場所に向かう。

僕が今向かってるのは、近くにある美容室。その美容室には、僕が恋をしている美容師さんがいる。

「いらっしゃいませ」

僕が美容室の扉を開くと、カウンターには僕の恋をしている美容師さんの宮内さんがいて、僕の胸は高鳴った。

宮内さんはとても綺麗で、今日も茶髪に染めたフワフワした髪を1つに縛っている。

「……あ、えっと……カットでお願いします!」

僕が若干上ずった声でそう言うと、宮内さんは「分かりました」と微笑んだ。

宮内さんに案内されて、シャンプーをした後鏡の前にある椅子に座る。

「柚月(ゆづき)さん……今回は、どんな感じに切る?なかったら、いつものように切るけど」

「いつものように切ってください……!」

「分かった。切っていくね」

「……お願いします」

僕の髪に、宮内さんは優しく触れた。その度に、僕の胸は嬉しさで広がっていく。

僕は、1年前から僕より3歳年上の宮内さんに片思いをしている。一目惚れだったんだ。

生物学的にみると、僕と宮内さんは同性。だから、この思いは伝えられない。

いつか、伝えられる時が来るのかな……。
< 1 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop