宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~



こんな田舎町で信じられないものを見た。

あの娘と結婚するのか…。


陸の心はほんの少し動きかけた。

でも、彼は見事に自制心というブレーキをかけた。

彼の経験が危険信号を発している。『派手な女には気をつけろ。』


もっと若い頃、彼には大きな失敗があったのだ。

モデルの様な美しいオンナに魅かれ、自分の物にする為に必死になった事がある。

彼女に喜んでもらえるような高価なプレゼントを贈り、
デートの度に高級なレストランへ出かけた。

食事の為だけに、香港へ飛んだこともあった。

今思えば、バカな投資だった。

まだ青く、人を見る目の無い年頃だったからオンナの手練手管に惑わされたのだ。

美しいオンナは、陸を愛していたのではない。
陸の持つ資産を愛していたのだ。なのに、彼女に翻弄された日々…。

今思うと、どうしてあんなオンナに引っかかったのか不思議なくらいだ。

恋は本当に人を盲目にするんだと実感した貴重な体験だった。
それ以来、仕事に生きて女は遠ざけている。



そして今、目の前に現れた『島谷一花』


あの時のオンナと同じ危険な香りがする。

陸はそっと座敷に戻った。

冷静になれ。冷静になって、祖父の念願だった美しい島を取り戻すのだ。


二度と、オンナで失敗する訳にはいかない。





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