宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~



その娘、竹中沙良(たけなかさら)とは面識があった。

「お久しぶり、陸さん。」

「どうも…竹中さん。お久しぶりです。」

確か数年前に縁談を持ち掛けられた記憶がある。

断った筈だが…。何故、わざわざ俺を名前で呼ぶんだ?

「両親の旅行に、ついて行くことにしましたの。」

綺麗にメイクして若く見せているが、自分とそう変わらない年の筈だ。
いったいこの親子は何を考えているんだろう。

「…そうですか。」

「今日のお昼、是非ご一緒させて下さいね。」

竹中社長夫妻はニコニコと娘の我儘を聞いている。
一応、取引先だ。親娘にどんな思惑があるか知らないが、礼を欠くわけにはいかない。

一花に会う時間が削られていくのが腹立たしかった。

空港からハイヤーで古窯のある町の近くに着いた後、
社長夫妻は窯へ見学に行き、陸は沙良の勧めるレストランへ行く事になった。

不承不承、その店の場所を聞いたら水杉の別荘の近くらしい。


陸は思いがけず沙良と島に渡り、『プチ・ポアン』へ行く事になってしまった。



< 54 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop