キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
それにしても茉緒の奴……。
会社の前で大荷物抱えて立っていたのには驚いた。
ここはオフィス街のど真ん中だ、買い物ついでに来るようなところじゃない。どうせバスでも乗り間違えてここら辺に来てしまっただけなんだろう。
それをお兄ちゃんの働いてるところを見たかったなどと誤魔化してるのにちょっとイラっときた。
俺も、ここで働いているんだが?
お兄ちゃんってこんなおっきな会社で働いてたんだね!すごいすごい!なんて感心しきりの茉緒に俺の機嫌は悪くなる一方。
俺は?
別に褒められたいわけじゃないが、大概、こいつはブラコンな気がする。
お兄ちゃんお兄ちゃんとなにかと陸翔の話をしてくる茉緒にちょっと不満が募っていた。
だが、大荷物を抱えている茉緒を放っておくわけにもいかず、タクシーがこちらに来るのに気づきそそくさとその場を去ろうとする茉緒を引き留め無理やりタクシーに乗せ帰らせた。
今日帰ったら会社を見に来たなんて嘘だろ、と問い詰めてやろう。
それと、大荷物の中からちらりと見えた食材で作るだろう今日の夕食はなんだろうとちょっと期待。
俺は、すでに茉緒に胃袋を掴まれてる気がする。
社長に気づかれないように緩みそうな頬を手で押さえ、これはまずいことになりそうだと考えていた。


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