キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です


予告通りいつもより早く帰ってきた智成とふたりで食卓を囲む。
「あ、うまい」
「でしょ~?」
昨日作った無水カレーは一日経って味に深みが増したようで最高の出来だと思う。
お鍋のおかげだけど自画自賛したい気分。
智成もパクパクと美味しそうに食べてくれてうれしくなる。
朝の蟠りは少し残りちょっとだけぎこちないけど他愛ない話をしながら食べていた。
普通にしようと思うのになかなか笑顔が作れない。智成はそんなこと気づきもせず昨日の話をしてきてドキリとした。
「昨日の会食さ」
「え? うん……」
聞きたくないなと一瞬気分が沈んだけど、話を聞くと社長とふたり、相手先も社長と部長のふたりの男四人で高級料亭で食事をしたそう。
アナゴの天ぷらがおいしかったとか、ごま豆腐が今まで食べた中で一番だったとか、男四人の中で智成が一番年下でしこたま飲まされて困ったとか。
やけに男四人でと言っていたのが気になったけど聞いてる限り女性の話は出てこない。
その後飲みすぎて眠かったけど帰るまで何とか持ち堪え、マンション前でお兄ちゃんと会って気が抜けたみたいだと笑っていた。
なんだ、女の人と逢ってはいないんだ。じゃあ、あの香水の匂いはなんだったんだろう?
疑問に思ったけど、まあいっか。
話しを聞いてるうちにどうでもよくなった。
「道端で寝なくてよかったね」
「寝ないよばか」
からかうように言うと笑ってツッコまれて、気づいたらいつものように笑いあって蟠りなんてなくなってた。
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