キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「あーそうだな、俺には関係ないことだった。悪かったよ。ちょっと茉緒の涙見て気が立っただけだ、すまん」
「あ、いや。智成が茉緒のこと思って怒ってくれるのは有難いよ、兄として。頃合い見て茉緒になにがあったか聞いてみるからさ」
「茉緒を寝かしてくる」
「あっ、ちょっ、俺が……」
慌てる陸翔を制止して茉緒をブランケットに包んだまま抱きかかえると、俺の行動に驚いたのか陸翔は伺うように聞いてきた。
「まさか、茉緒に惚れた、なんてことはないよな? やめておけよ? どうせ付き合ったって別れる羽目になるんだ。また茉緒が傷つく」
「はっ、まさか」
軽く笑い飛ばしてリビングを出た。
俺の取り巻く環境を懸念しての言葉だとわかってる。半端なつもりで茉緒に手を出せば陸翔は黙っちゃいないだろう。
俺は咄嗟に特別な感情を誤魔化したことに自嘲するように苦笑いを零した。
茉緒の部屋に入りそのまま寝かせるとベッドに座り頭を撫でてやる。
今はうなされてないようですやすやと寝息を立てている。
陸翔に関係ないと言われても、俺は茉緒を放っておけない。
短い付き合いでも一緒に暮らして茉緒の明るさやうまい手料理に癒やされて、陸翔とも三人で飲み明かす夜は楽しいと感じている。
陸翔だけでなく茉緒も大事な存在だ。
だから茉緒を泣かせる奴がいるのは許せない。
もう夢に出てくるなと、見たこともないひろきという男を忌々しく思い浮かべた。
部屋を出ようと振り返るとついてきていたらしい陸翔がドアに立って声をかけてきた。
「なあ、智成」
「……なんだ?」
「……いや、なんでもない」
険しい顔でいた俺を見て陸翔は言葉を飲み込んだようでなにも言わず自分の部屋に入っていった。
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