鬼麟
包装を破り、大きな口を開けてから私の方へと見て、そのままげんなりとした顔に変わる。

「えぇ〜、何それ」

 私の手元を見ながら齧った一口は大口とは変わって小さく、心底分からないと言っているような顔をしている。
 なに、とは言わずもがなお弁当を指さしており、綾が作ってくれたこともあって少しだけムッとする。

「どこからどう見てもお弁当でしょ」

「いやいやいや、え、そんなんで足りるの? 動力減なに? 霞?」

 そんなのでとは、確かに普通より小さいというか少なめとは言え、あまりの言いようにさすがに失礼だなとは思ってしまう。

「男だからそう見えるんでしょ。ねぇ、倖?」

 おにぎりを口にしていた彼は、私の手元を見るなり少し困ったように眉を八の字にしてから微笑んだ。されどそれ以上なにも言わず、ただ微笑むものだから、彼はどうやらレオと同意見だったらしい。

「女子の胃袋にケチをつける男って、モテないと思うんだよね」

 修人へと向かってそう言えば、レオはサンドイッチを飲み込んでから反論する。

「直接言えばいいのに、俺は悲しいよ」

 わざとらしくめそめそとした演技をして倖の肩にもたれかかれば、鬱陶しいとばかりに冷ややかな目がレオを窘める。
 冗談だと笑うレオにつられてくすくすと零せば、頭に何かが乗せられてそれは私を撫でていた。
 見上げれば赤いそれと目が合い、彼は穏やかに細められる。

「いっぱい食え」

 すぐに人の頭を撫でてくるのだから、彼は私を幼子にでも見えるのだろうか。
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