鬼麟
 そもそも、私が護られるというのはガラでもないし、そんなことされるほどヤワではないと自覚もある。なによりも、護られているだけで動けないのは、一番辛いというのを知っている。結局は自身の手でどうにかするしかないことも。

「なっちゃん、良く聞いてね」

 ずいっと近寄った顔に手で押し退けるが、あまり意味がない。私はぞんざいな返事を返しつつ、手元へと視線を戻すも彼は平然と話を続ける。

「僕らとなっちゃんは仲が良いでしょう?」

「それは初耳ね」

「仲良いの! だからね、もう他にその情報が行き渡ってる可能性があるわけ。んで、僕らを潰そうとしてる奴らが狙ってるかもしれないでしょ」

 授業が今日も今日とて無いに等しいからといって、ここまで自由にしていていいのだろうか。学生の本分とは一体全体どこへ行ってしまったのか。
 人の事をとやかく言えることもなく、私も私で好きにしているのだから、その時点で同罪だ。
 蒼の話に耳を傾けつつ、視界に入るレオの席は空席だ。先程何かあったのか、教室から出て行ってしまったのだ。授業中だというのに、不良ここに極まれりと心の中で呟く。

「だからさ、お姫様になった方が護りやすいの。公式的になっちゃんがお姫様だよ〜って言っちゃえば、迂闊に手を出すこともできないだろうし、一番危ないのは宙ぶらりんな今なんだからね!」

 彼の言葉には一理ある。なんだかよく解らないけれど、仲が良いかもしれないと狙われるよりも、むしろ姫だと公言してしまった方が手は出しにくい。それに、私が彼等と親しそうに見えるからといって、狼嵐自体を動かせるかといえば否だ。
< 65 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop