鬼麟
 それでも取り繕わなければ立っていられないのだと、両手を上げれば少しだけ彼は不機嫌そうにため息を吐く。
 陽の光の降り注ぐ屋上でPCなぞ見づらかっただろうにと、口に出さずに立ち上がる彼を見上げればその手は頭の上へと滑る。
 待ってるんだろ、と短く言ってすたすた歩いて行く背中を追い掛けて後ろから飛びかかる。

「背が低いからって嫌味かコノヤロー!」

 不安なんてものはもう隠せるほどに鳴りを潜めるようになっており、けれどやっぱりどこかで思ってしまうのだ。
 嫌わないで貰いたいなと淡い願いを。
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