ハニー、俺の隣に戻っておいで
ニーナはその大きな少年を前にして、そっと微笑んだ。 優しいジェームズはあの意地悪なジョンよりずっと目の保養になる、彼女はそう結論づけた。

「ジョンってあなたの叔父さんなの?」

「そうだよ」
ジェームズは他人事に首を突っ込んだことを叱られるとばかり思っていたので、会話の話題が自分の叔父になるとは予想していなかった。

なぜ急にジョンのことなんか聞くのだろう? つまり、きっと……?

「おじさんをもう一度殴るつもり?」
そう考えただけでジェームズはビクビクする。

一方、ニーナはちょっと恥ずかしそうだった。 けれども、そよ風が髪を靡かせると気恥ずかしさは徐々に消えていく。

ニーナがあの男を殴った唯一の理由は、彼の話し方が鼻持ちならない上、許しがたい酷い目に遭わされたからに他ならない。

「相手から手を出してこない限り、私は誰も攻撃しない。 これが私の人生の鉄則よ」
視線を上げてジェームズを見つめると、ニーナは叔父を相手にした時より気長に構えることができたのだ。

ジェームズはニーナが何を言いたいのか理解すると、つい今しがた彼女を誤解したことを後ろめたく思った。

そこで、戸惑いを隠すためわざと話題を変えた。
「俺の叔父さんを探しているんだろ?」

「そうよ」
例の約束によれば、ジョンにホテルで撮ったビデオを削除させるには、ニーナはもう一度彼に出くわす必要があった。

あのビデオ録画を削除さえしてしまえば、もう何も心配することはない。 そして、なるべく早く夫に離婚を認めさせればすべてうまくのだ。

「叔父さんの居所を教えたら、さっきの失礼を許してもらえない?」
ジェームズは機知に富んだ男で、明るく、しかもいたずら好きで、ニーナも彼を邪険に追い払うわけにはいかなかった。

親切にしてくれた人には同じように親切に接し、礼儀を返すのが彼女のやり方なのだ。
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