ハニー、俺の隣に戻っておいで
「ああ、 わかった! あなたの叔父さんニニの事好きなのね。 そう言う事でしょ? 本当にニニが好きなの、あの人?」 ミシェルの反応は、まるで信じ難いゴシップに誰よりも先に気づいたかのようだった。 彼女は心から湧き上がるウキウキを抑えられず、口を開けたまま、まだ驚きの残る顔に悪戯っぽい表情を浮かべてニーナを見つめた。

ミシェルが余りに単刀直入にそう言ったものだから、ニーナは不安と少しばかりの罪悪感を感じていた。 けれども彼女の指摘は当を得ていたので、ニーナは夢見心地で心臓がドキッとするのを感じ、 しばらくの間、言葉もなく固まっていた。 そして、ようやく我に返ると大慌てで車を降り、「何言ってるの!訳わからないわ」と叫んだ。

車から逃げ出してホッと溜息を吐くと恥ずかしさは少しおさまった。

そして深呼吸してみたが、なぜ心臓がこんなにドキドキしているのか分からなかった。

今の所、彼女の切なる願いはさっさと離婚して別の誰かと恋に落ちることだったが、その相手は断じてジョンなんかではあってはならない。

そよ風が彼女の心をそっと撫でると、落ち着かない気分も心地よく安らいできた。

しかも、シーフードレストランから漂う食べ物の香りがニーナの食欲を刺激する。 彼女は過去二年間、その懐かしい料理の匂いを嗅いでいなかった。

そのシーフードレストランに入ることができるのは、選ばれた裕福な人々か有力者のみで、 専用の会員カードがなければ入れてもらえないのだ。

けれどもジェームズは例外で、 カードなしでも顔パスで入れるのだった。 しかも、ウェイターたちは皆すれ違いざまにジェームズに向かって敬意のこもったお辞儀をする。
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