ハニー、俺の隣に戻っておいで
ニーナは人とやり合う手段をたくさん持っていたが、中でも一番直接的な方法、つまり殴るのが好みだったのだ。

イザベラに陰で中傷されたので、お見舞いしてやったまで。

つまり、おあいこだ。

不意に、老人が話し合っているのが聞こえてきた。 ニーナは携帯電話を仕舞って立ち上がり、男たちを指差した。
「何してるのよ? やめて!」

男たちはすぐにイザベラを殴るのをやめ、 振り返ってニーナに目配せすると、一目散に逃げ出した。

そのときの彼女の演技力といったら、賞でも狙えそうだ。

「どこ行くのよ? 人を殴っておいて、逃げるつもり?」
ニーナは彼らにウインクをして、さっさとその場所から立ち去るように合図した。

そして、まだ泣いているイザベラに駆け寄り、立ち止まった。 「ニーナ、助けて!」 ニーナの声を聞いたとき、イザベラはまるで命の恩人を見つけたかのようだった。

身体が袋に半分入ったままの彼女は、屠殺されかけの豚か物乞いのようだ。

この光景を見たニーナは大笑いしそうになり、急いで口を覆わなければならなかった。

「イザベラ、大丈夫? すぐに出してあげるから」
そう言うとニーナはしゃがみ込んで、ロープで縛られたイザベラの手足をほどいた。

そして両手で袋の上を掴み、わざとイザベラの髪を引っ張った。

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