ハニー、俺の隣に戻っておいで
「すみません、ちょっとお待ちいただけませんか?」

エレベーターのドアが再び開き、ヘンリーの顔が現れる。 いつものように金縁の眼鏡をかけているが、そのせいで学者のような雰囲気を纏っている。

目が合うと、彼の唇は優しい笑顔を作った。

「ええと、 ルーさん、 あなたに ご用があるのですが……」

もちろんニーナは驚いた。 「何でここにいるのよ?」

彼女は、ジョンに会った時のことを思い出し、ヘンリーが現れるところならいつでもどこでも、ジョンも必ず現れるはずだと考えていた。

つまり、またあの男に会うことになるのだ。

ニーナは一人でクスクス笑った。

二度目の遭遇だ。

やったわ。 後で会ったときに挨拶だけすればいい。

そして、さらにもう一度出会ったら、ジョンはビデオを削除することになる。 そうなれば心配事はなくなるだろう。

ヘンリーが話し出そうとしたとき、ジョンの声が聞こえた。 「おい、どうした?」

「ルーさんです。」 ジョンが入れるよう、ヘンリーは脇に寄らなければならなかった。

黒のスーツを着たジョンは、身長と厳しい顔つきのせいで圧迫感を放っている。

彼が乗り込んでくるや否や、ニーナはエレベーターが小さすぎて息ができないような気がした。

「こんにちは。 また会えて嬉しいよ」 思わずジョンの顔にうっすらと笑顔が現れる。

「こんばんは、おじさん。」 ニーナの顔は紅潮したが、なんとか微笑むことができた。 「2回目ね」

彼女が2本の指を伸ばしているのを見て、ジョンは不意にむんずと掴んでやりたい衝動に駆られた。
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