ハニー、俺の隣に戻っておいで
ニーナは歯を食いしばってジョンを睨みつけた。 怖がっているのを悟られたくないのだ。

「逃げよう! ほら、走って!」
いま二人の目の前に立っている男は相当ハンサムだが、悪魔のような側面を隠し持っている。 素敵な顔の後ろに、いつだって邪悪さを潜ませているらしいのだ。

「逃げるだって?」
その間ずっと、ジョンの視線はニーナに釘付けになっていた。

「俺を殴っておいて逃げられると思っているとは、ここ数日おまえを甘やかしすぎたらしい。 お仕置きの時間だ。チャン家はまったく役立たずだ」
ジョンはそう思った。

一方ニーナも決心をしていた。 彼女の琥珀色の目がきらめく。

逃げる必要などない。

例のビデオのことを思えば、これは仕返しするチャンスなのだから。

ジョンが一歩一歩ニーナに近づくと、 ニーナはミシェルを庇いながら後ずさりしたが、目には警戒の色が現れている。

怖いのか、今更?

手遅れだね、とジョンは内心ほくそ笑む。

静かな廊下では彼の鈍い足音だけが響く。

ニーナは後ずさりするのをやめ、コートを脱ぎ始めた。 これから自分が何をしようとしているのか、よくわかっているようだ。

一方、ミシェルは怯えていた。
「なんでコートを脱ぐの? 私のせいなのよ、 あなたが引き受けてどうするの。 連れてこなきゃよかった」

ミシェルはあまりに狼狽えたせいで、目には涙が溜まっていた。

「黙れ!」
あいつは一体何を考えているんだ? ニーナが破れかぶれで考えている間、

ジョンは彼女をじっと見つめていた。 そして彼がふんと鼻を鳴らしたとき、心の内の悪だくみがほとんど透けて見えるようだった。 ジョンはすらっとした手を伸ばしてニーナの黒い髪を梳かす。

「服を脱いだら行かせてもらえると思った?」

「誰が誰を手放すかなんて予想できるものじゃない」
ニーナは時々ジョンの方を盗み見しながら、さらに服を脱ごうとしているようだった。

ジョンは彼女が何をしようとしているのかすぐに理解して、 思わずニヤニヤした。
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