迷いの森の仮面夫婦
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余りに過ごしていく時間が愛しすぎて忘れてしまいたい事が沢山あった。
海鳳が愛する人が桜子さんだとか、この結婚は本物じゃなくって偽物だとか
それでも抱き合う体温はいつも優しくて、これがまやかしなんかじゃないと錯覚してしまう。 その重圧に耐えきれなくなって、いつしか彼の手を離す事ばかり考えた。
いつだって惜しげのない優しさをくれるあなたに、本物の幸せをあげたい。 少しずつさよならの準備を整え始めていた。
今年いっぱいで、私は五年以上お世話になった幕原中央総合病院に退職願を出していた。 そして海鳳とさよならをする準備も――
もうこれ以上一緒に居れない。 もうこれ以上愛せない。 自分を壊してしまいそうで
「うん、顔色も良さそうだね。 それに心拍数も安定してるし
でも矢沢さん、具合いが悪くなったら我慢しないですぐに病院に来ること」
「はいはい、高塚先生にはかなわねぇな」
余りに過ごしていく時間が愛しすぎて忘れてしまいたい事が沢山あった。
海鳳が愛する人が桜子さんだとか、この結婚は本物じゃなくって偽物だとか
それでも抱き合う体温はいつも優しくて、これがまやかしなんかじゃないと錯覚してしまう。 その重圧に耐えきれなくなって、いつしか彼の手を離す事ばかり考えた。
いつだって惜しげのない優しさをくれるあなたに、本物の幸せをあげたい。 少しずつさよならの準備を整え始めていた。
今年いっぱいで、私は五年以上お世話になった幕原中央総合病院に退職願を出していた。 そして海鳳とさよならをする準備も――
もうこれ以上一緒に居れない。 もうこれ以上愛せない。 自分を壊してしまいそうで
「うん、顔色も良さそうだね。 それに心拍数も安定してるし
でも矢沢さん、具合いが悪くなったら我慢しないですぐに病院に来ること」
「はいはい、高塚先生にはかなわねぇな」