言いましたが、 違います‼︎

お前が言うな!



「やだぁ‼︎しんたろうくんもいくの‼︎」

お気に入りのリュックサックに、お気に入りのおもちゃを入れて、お気に入りの靴を履き、ばっちりお出かけスタイルの慎太郎が泣きじゃくる。

「しんたろうくんも みさとちゃんと いっしょにいくのぉ」

つっかえるお腹を抱えながら、慎太郎の前に座り込み。
たっぷり溜めた涙を拭き取りながら、

「慎太郎は今から幼稚園でしょ。みんなとかけっこするお約束があるんじゃないの?」

お腹の中を絞られているような痛みと戦いながら、なんとか慎太郎に話しかける。

「いい。ほいくえんもかけっこもしない。みさとちゃんと いっしょがいい‼︎」

きたー

とお腹の痛みに耐えながら、抱きつく慎太郎の背中を摩る。
顔が歪む。

慎太郎をどうにかして!
と目で訴えても、困った顔のママ。

肝心の永太郎は、どうしてもと頼まれた仕事で家にいない。

「使えない」

心の声が漏れる。

「おばぁちゃんと一緒に」

とママが言おうものなら、被せるように

「おばあちゃん、いや!みさとちゃんがいい!」
とママの手を振り解く。

まぁ、困ったわ
と手を頬に触るママ。

そんな攻防戦を繰り返している内に、幼稚園のお迎えとタクシーが同時に到着する。

痛さで顔が歪む私、
号泣で私にしがみつく慎太郎。
困ったわとママ。

カオスだ。

昨日までは、「たのしみだねぇ」と「おにいちゃんだから、おするばんする」と言っていたのに、私まで泣きそうだ。

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