言いましたが、 違います‼︎


「永太郎さん」

目の前に若い女性が子供を抱いて立っている。

距離を空ける。

この男の女だなんて思われたくない。

「陽子(ヨウコ)ちゃん?」

驚く永太郎。
ここは早く立ち去るべきだ。
関わってはいけない。
それはわかっている。
でも、疲れ切った足が上手く動かない。

「この子、慎太郎(シンタロウ)って言います。姉と永太郎さんの子供です。 」


陽子ちゃんと呼ばれた大学生ぐらいの女の子が赤ん坊を永太郎に突きつける。


「慎太郎を産んですぐに姉はどこかに行きました。
今までなんとか慎太郎の面倒を見て来ましたが、もう限界ないんです」

彼女の様子から本当に限界なんだとわかる。

社会に出て、ある程度収入があるならともかく若い彼女には子供を育てること自体が難しいのだろう。

「今までよく頑張ったね」

永太郎はそっと優しく慎太郎を抱きながら、陽子の頭を優しく撫でた。

陽子は泣くのを必死に堪えている。

「父親である永太郎さんが責任を取るべきです」

陽子は下に置いてあった大きな荷物を永太郎に押し付ける。

「ミルクとかおしめとか家で使ってたモノです。
もう必要ないので全部あげます」

陽子が私を見る。

「若い彼女さんと仲良く頑張って下さい」

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