言いましたが、 違います‼︎

6-4



永太郎もそうだが、私の家で自由すぎない?

とは思うが、今は正直にありがたかった。

「三枝さんの旦那さんって、何をしている人なんですか?」

食事中の何気ない会話のはず。
でも、三枝さんは動きを止めた。

三枝さんの旦那さんは、社内でも謎だった。

誰も見た事がない。
フルで働いている様子から実在しないのではないかと言う噂まであった。
いたとしてもフルで奥さんを働かしている残念な人認定されていた。

少し考えてから「今の根津にならいっか」と呟いた。

「医者よ」
「医者?」

医者もピンキリだったはず。
年下の研修医かなにかかなぁと思いを走らせていると

「ベリーヒルズビレッジの病院で小児科医をしているわ」

今度は私が驚く番だった。

「セレブじゃないですか‼︎働く必要あります?」

三枝さんは苦笑いをして「ないわね」とさらっと言う。


「でも、仕事が私の精神安定剤なのよ」

一生懸命ご飯を食べる健君の頭を撫でる。

「この子を孕った時辞めるつもりだったの。
でも、斉藤部長がせっかくの制度だからって育休を申請してくれて。
それでも、復帰するつもりなかったのよ。
でも、育児ノイローゼになっちゃってね」

気が付いたらね。会社の前にいたの、私。
家にこの子を置いたままね。

< 36 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop