言いましたが、 違います‼︎

7-1



慎太郎は本当に手のかからない子で、
「お腹がすいた」「おむつ替えて」「眠い」
とぐずるぐらいで、大声で泣く事も夜泣きが酷い事もなかった。

乳幼児は凄まじいモノ

そう思っていた。
だからこそ、少しでも余裕が出てきると不安が湧いてくる。

あの子もこんな不安と戦ってたのかなぁ

黄昏ているとスマホがなる。

[お疲れ様]

調子のいい声が聞こえる。

[そっちはどう?慎太郎はいい子にしてる?]

なんだろう。凄くムカつく。
私は永太郎にムカつく以外の感情を感じた事がない。

「こっちの事はいいから‼︎いつ帰って来るか言いなさいよ」

[ハハハ、それがね]

乾いた笑い声が聞こえる。
嫌な予感しかしない。

[ごめん、仕事入ってるの忘れてて・・・
3週間ほどお願い‼︎

これが終われば、まとまったお金も休みも手に入るんだよぅ。
お願い、みーさーとーちゃん]

私は大きく聞こえるようにため息をついた。

「あんたバカなの?
目の前にいない状態で、慎太郎をお願いって言われたら “いいよ” って言うしかないじゃない‼︎
ダメって言ったら、戻って来るの?
来ないでしょ‼︎ホントにバカじゃない」

スマホの向こうで[確かに]と笑う声が聞こえる。

この男は私をイラつかせる為に存在するのかもしれない。


< 39 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop