言いましたが、 違います‼︎


「無事に帰って来てしまって、ごめんなさい」

突然の大人の声に驚き振り向くと、
永太郎が立っていた。

あまりの驚きに大きな声が出る。

「なんでここにいるのよ‼︎」

私の声に驚き慎太郎が泣く。

「ごめんね。びっくりしたねぇ」と慌てて抱き上げた。

「玄関空いてたよ。不用心だなぁ。
気をつけなきゃダメだよ」

ちょっと買い物へ行っていたかの様に振る舞う永太郎。

「ただいまぁ。パパ、帰って来たよ」

慎太郎に触ろうとする。

慎太郎は私にしがみつき、大声で泣き始めた。

「ちょっと‼︎離れて。臭いのよ‼︎
お風呂入ってきて‼︎」

浴室を指差し言うと、
永太郎は自分の匂いを嗅ぎながら
「そんなに臭うかなぁ」と首を傾げる。

「いいから、早く入って来なさい‼︎」

強めに言うと永太郎は「はーい」と浴室へと向かった。



さっぱりしたぁ

永太郎はそう言いながら出てきた。

慎太郎を抱こうと手を差し出しながら、こっちにくる。

慎太郎はまた私にしがみつく。人見知りが始まった?

「ありゃ、やっぱりパパの事忘れちゃったかなぁ?これからいっぱい遊んであげるからねぇ」


泣き始めた慎太郎の頭を優しく撫でる。

ショックを受けている様子もなく、
ザマァみろと思った気持ちが宙に浮く。

「お腹空かない?何か作るね」

永太郎がキッチンに行った。

普通だ。
ずっと家に居なかったとは思えないほど、普通だ。

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