言いましたが、 違います‼︎

10-1


「あぁ、疲れた」

ソファに体を沈める。
「お疲れ様」と永太郎がお茶を出してくれた。

「ホントよ」と飲みながら言う。
足元に慎太郎が転がってくる。

「前よりも移動距離伸びたんじゃない?」
「そうなんだよ。そろそろ柵でも設置しないと危ないかもねぇ」
「ネットで適当なの見繕っておいてよ」

暇でしょ?と言おうとして言葉を飲み込む。

これか!

突然黙る私を心配そうに永太郎が飲み込む。

「どうしたの?」
「なんでもない」

と慌てて否定しても
「言葉を飲み込むなんて美紗都ちゃんらしくないよ」
と微笑んでいる。

「らしくないって私をなんだと思ってるのよ‼︎」

足元に転がる慎太郎を抱き上げ
「ひどいですねぇ」と言うと
「そうそう。それこそ美紗都ちゃん」
と永太郎が笑う。


私は大きくため息をついた。

「今、暇なんでしょって言おうとしたのよ」
「それが?」
「それがモラハラだって話を今日したから、それを思い出しただけ。それだけよ」

机に並んだ晩御飯を食べながら、ため息混じりで話してみる。
永太郎は、楽しそうに笑っている。

「暇でしょって言ってみ」
「暇でしょ!」
「暇じゃないよ。見てよこれ」

永太郎は散らかった洗濯物の山を指差す。

「あぁ」

言葉が漏れる。

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