冬の春
朝陽と海とパン

「はぁ~、やっぱり寒いなぁ」


私は自分の肩を擦りながら、岩場に腰を下ろした。

ブルッと震え、膝を抱えて身を縮める。


12月の海が寒いのは当たり前。

ううん、寒いどころではない。

凍え死にそう……。

しかも、クリスマスの早朝。

身も心も冷え切っている。

はぁ~、と溜息を吐くと白い息が逃げていった。



昨夜はクリスマスイヴで世間の人々は楽しい時間を過ごしただろう。

だからこんな日の朝っぱらに、人気のない寂れた海岸に来る人はいない。

そりゃ、そうだ。

観光地でもなければ、店が近くにあるわけでもないただの海。

薄闇の世界に、穏やかなさざ波だけが響いている。

あまりにも静かすぎて泣けてくる。

でも、今の私には丁度いいのかもしれない。


「ああ、悔しい!!」


私はおでこを膝の上にのせてうずくまると、涙がスカートの上にポタッと落ちた。
 


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