今さら好きだと言いだせない
 いきり立ったように乱暴に言い放った俺は、そのまま腰を上げた。
 いつまでもこんなムカつくヤツと喋っていられるか。町宮と廣中を探さなければ。

 座敷を出てトイレへ向かおうとしたら、反対方向からふたりが戻って来た。


「大丈夫か?」


 俺の問いかけにふたりはコクリとうなずいたが、よく見ると町宮の目が充血している。泣いたのだろうか。


「ごめん。俺……ボディーガード気取りでついて来ておきながら、役立たずだな」


 情けない言葉しか出てこない自分がカッコ悪くて仕方ない。
 町宮を守りたくてここに来たのに、結局彼女は傷ついて泣いている。……守り切れなかった俺のせいだ。


「ちょっと酔ったみたいだから、今日はもう帰るね」


 廣中が、置いている荷物を取ってくるからと座敷に戻っていく。
 
 町宮とふたりになった俺は彼女の顔を覗き込んだが、フイッと視線を逸らされた。
 きっと、泣き顔を悟られないためだろう。

 そんな姿を目にしたら俺はたまらなくなって、気がついたら彼女の頭を右手で抱えるようにして抱きしめていた。


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