今さら好きだと言いだせない
 服の下から彼の手が侵入してきて素肌に触れたあと、私の服を器用に脱がせた。
 気づけば彼自身も素早く脱いでいて、胸板が思っていた以上に逞しく、程よく引き締まっていカッコいい。

 欲情した芹沢くんの瞳が今まで見た中で一番セクシーで、私の気持ちも高揚してくる。
 恥ずかしさと、緊張と、少しの不安と、ドキドキ。それが順番に押し寄せてきて、胸の中がぐるぐるする。
 だけど取り繕う余裕なんてなくて。彼の甘い視線とキスで、私の思考回路はショート寸前だ。

 彼が私の首筋や鎖骨に舌を這わせつつ、手は太ももや胸のふくらみを絶え間なく撫でる。
 お互いに吐き出す息が熱くて、どんどん体が溶けていく。

 ふたりとも裸になってベッドで絡んでいるのだと意識すると、最初は緊張でどうにかなりそうだったけれど、途中からどうしようもなく愛しい気持ちがこみあげてきて、自分から手を伸ばして彼の首に抱きついた。


「あっ」

「南帆……かわいい」


 チュッといたずらについばむようなキスをしたあと、彼は満足そうな笑みを浮かべた。

 だけどそれはほんの一瞬で、そのあと私は彼に熱く激しく抱かれ、そのままふたりで眠りについた。
 まさか、芹沢くんの腕枕で眠る日が訪れるなんて……。

 一緒に朝を迎え、たとえ一夜限りだったとしても構わないと思ってしまうほど、私は幸せな気持ちに包まれていた。

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