今さら好きだと言いだせない
「廣中は?」

「今日は友達とお昼に会う約束があったんだって」

「ふぅん。そうか」


 お昼は燈子といつも一緒に居るため、私がひとりで昼食を取っているのが不思議だったのだろう。
 私の言葉を聞いて、納得するようにうなずいた。
 
 芹沢くんは食事をする姿もカッコいい。
 だけど勢いよく酢豚の肉を口に放り込んでいて、喉を詰めないかと心配になってしまう。


「そんなに急いで食べたら体に悪いよ。ちゃんと噛んでから飲み込んでね」


 私が声をかけると、芹沢くんは一瞬全身の動きを止めたあと、ニヤリと口元を緩めた。
 休み時間はまだあるものの、ゆっくり味わっている場合ではないのだと言わんばかりにコップの水を体に流し入れる姿に私は圧倒される。
 普段は全然早食いではないので、こんな彼は珍しい。


「そうやって心配されるのもいいな」

「もう……」

「町宮こそもっと食べろよ。唐揚げ、残ってるぞ」

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