今さら好きだと言いだせない
§2.イケメン同期が急接近
***

 芹沢くんと約束していた土曜日になり、私は身なりを整えて自宅マンションを出た。

 今日は休日だけれど、菓子博で仕事関係の人に会うかもしれないので、服装には気をつかった。
 カジュアルすぎるのもいけないし、かと言って黒のスーツだとなんだか硬い。

 結局、落ち着いたモカブラウンの上品なフレアスカートを選び、上は白のタイトニットを合わせた。

 待ち合わせは菓子博が開催される最寄り駅。
 芹沢くんとは知り合って四年が経つけれど、休みの日にふたりで会うのは初めてだなと、電車を降りて改札を抜けながらふと思う。
 
 なんだか今日は、まるでデートみたいだ、と……。

 いや、私が菓子博に行きたがっていたから、芹沢くんはそれに付き合ってくれただけで、深い意味などもちろんないのだろう。

 私だけが妙に意識してどうするのだと小さくかぶりを振ると、建物の壁にもたれかかって私を待ってくれている芹沢くんが目に入った。


「ごめんね。お待たせ」

「いや、遅刻してないよ。時間ぴったり」


 芹沢くんの格好は会社で見るのと同じスーツ姿なのに、社外だとまた雰囲気が違う気がした。

 彼が左腕にしている腕時計で時間を確認する。そんな仕草までカッコよく見える。


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