執事的な同居人
鬱憤




─────────颯太side






佐々野海と会話をする紀恵さんは

笑顔だった。








(ねむっ……)




朝。



いつもと同じ時間に目を覚まし、顔を洗い、歯を磨く。



紀恵さんが起きてくるのはこの1時間後。


起きてくる前に朝ご飯の準備をして、紀恵さんのお弁当を作る。





(今日はタコさんウィンナーでも入れてみましょうか)





また子供扱いだと言われるかもしれませんが。


想像するとクスリと笑えるものの





「…………………」





昨日のことが、心の中でざわめく。





"子供扱い"


しているつもりはない。



あの頃と比べれば、紀恵さんはだいぶと言って良いほどに大人っぽくなっていた。




久しぶりに再会したあのとき


不覚にもドキッとしてしまったくらいだ。




そんな彼女に突如現れた男の影。



そいつの事を知ったのは、紀恵さんの携帯の画面から。表示されたその名前は確実男の名前だった。


そいつと連絡を取り合っているみたいだが、その場面を目撃するとき、いつも紀恵さんは楽しそうな顔をする。





(………付き合っている、のか?)





紀恵さんももう高校生なのだから、おかしな話ではない。


至って普通のことだ。ちゃんと理解してる。






……なのに





(彼氏…ね、)





彼氏という存在に、何故こうも焦っているのか。





「……、……あっ。」




クシャッ、と音を立てて卵が潰れた。ボウルの中には粉々になった殻がチラホラと散らばる。





力入れすぎたか…




こんなミス、滅多にしない。





(俺らしくないな……)





俺らしいことと言われれば答えづらいが


紀恵さんの前では完璧な人でいなければならない。





………昔のように。


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