アンドロイド・ニューワールド
「さて、それでは」

と、碧衣さんは言いました。

「言いたいことは言ったので、僕は自分の住処に戻りますね」

「そうですか」

「さっきも言った通り、僕はあなたの研究成果に期待しているので。何か困ったことや分からないことがあったら、聞いてくれて良いですよ」

「分かりました。聞きます」

と、私は答えました。

これは本音です。

久露花局長や、朝比奈副局長でも、分からないことはあるはずです。

そんなとき、同じ『新世界アンドロイド』同士、同じプログラムを受けている者同士、共感出来ることはあるでしょう。

そのときは、碧衣さんに頼ることにしましょう。

紺奈局長さえ絡まなければ、1110番はまともですからね。

え?まるで普段の碧衣さんが、まともではないと言いたいようだ、って?

…気のせいですよ。

「じゃ、連絡待ってますね。さようなら」

「はい、さようなら」

と、私は答えました。

すると同時に、碧衣さんは消えました。

また、ステルス機能で姿を消したのです。

…そういえば。

『人間交流プログラム』を受けている間は、常時通常モードで稼働すること、と局長に言われましたが。

つまり、ステルス機能といった、通常人間には使えない特殊機能は、使わないことになってるはずですが。

思いっきり使ってましたね。

紺奈局長も知っているはずですが、後で怒られないのでしょうか?

…それにしても。

まさか、先に『人間交流プログラム』を受けている『新世界アンドロイド』が、あの1110番だったとは。

…寄りにもよって、ですね。

どうせなら別の『新世界アンドロイド』が良かったと思うのは、これは私に人間の感情が芽生えているのか。

それとも、単に1110番の異常な紺奈局長好きが、面倒臭いと思っているだけでしょうか?
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