アンドロイド・ニューワールド
第10章〜Ⅱ〜
借り物競争が、無事に終わり。

さて、あとはクラス対抗リレーを待つだけ、と思いながら、生徒テントに戻ろうとしていたとき。

「ごめーん、久露花さん」

と、女子生徒は言いました。

今、私に話しかけましたよね?

振り返ってみると、クラスメイトの一人です。

「何でしょうか?」

「久露花さんって、緋村と仲良かったよね?」

と、女子生徒は言いました。

緋村。

奏さんのことですね。

「はい。お友達ですからね」

「ならこの後、緋村が補欠になってる種目に、代わりに出てくれない?」

と、女子生徒は聞きました。

どういうことでしょう。

「うちのクラス、今日一人休んでて。その人が棒奪いに出る予定だったんだけど、休みでしょ?だから、補欠の緋村が出なきゃならないんだけど…」

と、女子生徒は言いました。

そういえば、奏さんは補欠選手として登録されていたんでしたね。

…棒奪い?

「緋村は出られないから、代わりに久露花さん、出てくれない?」

「奏さんは出られないのですか?その、棒奪いとやらいう種目には」

と、私は聞きました。

奏さんが車椅子だからといって、何でも除け者にするのは良くありません。

創意工夫の問題です。

それにしても棒奪い、とは。

何だか、物騒な名前の種目ですね。

先程私が出場した借り物競争は、あくまで「借り物」でした。

つまり、使い終わったら返品していた訳です。

しかし、棒奪いという名前からして、今度は借り物ではなく、完全に略奪するのでしょう?

恐ろしい種目です。

「いや、出ても役に立てないだろうし…。人が群がるから、結構危ないのよ」

と、女子生徒は言いました。

成程、やはり危険な種目なのですね。

やっていることは略奪行為なのですから、きっと醜く野蛮で、残酷な戦いが繰り広げられるのでしょう。

車椅子の奏さんでは、いくら創意工夫しても、巻き込まれて怪我をするかもしれません。

略奪ですからね。

大切なお友達を、そんな危険な目に合わせる訳にはいきません。

私が、代わりに最前線の矢面に立つとしましょう。

銃後は、奏さんに任せます。

「分かりました。私が出ましょう」

と、私は答えました。

「本当?助かる〜。他に頼める人いなくって」

「いえ、構いません。まだ死ぬつもりはありませんが、万が一ということもあります。どうか私の代わりに奏さんに、『靖国で待つ』と伝えてください」

「や、やす…?」

「頼みましたよ。大丈夫、私は生きて帰ります」

と、私は力強く宣言しました。

では、いざ出陣。
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