アンドロイド・ニューワールド
「…はい?」

「瑠璃華さんには分からないよ。俺の気持ちなんて。事故に遭ってからずっと、両親をなくして、両足をなくして、頼れる親戚もいなくて、それからずっと、人から軽蔑されて遠ざけられて迷惑がられて、一人ぼっちで生きてきた俺の気持ちなんか」
 
と、奏さんは私を睨むようにして言いました。
 
答える言葉が見つかりません。

私は奏さんではないのですから、奏さんの気持ちなんて、分かるはずがありません。

「…」

「良い機会だよ。そもそも瑠璃華さんは、俺の隣に相応しい人じゃなかったんだ。瑠璃華さんには生徒会長みたいな、賢くて人気者で、明るい人の方が似合ってる。もう金輪際、俺には近寄らなくて良い」

と、奏さんは言いました。

「最初からおかしかったんだ。俺みたいな人間と、瑠璃華さんみたいな美人で優しい人が、友達だなんて…。親友だなんて…。そんなの有り得ないことだったんだ」

「…私は、そんな風には…」

「瑠璃華さんには分からない。でも、俺も、皆も分かってる。最初から、一緒にいるべきじゃなかったんだ」

と、奏さんは言いました。

…皆って、誰のことですか?

「…もう、俺に話しかけないで」

と、奏さんは言いました。

それっきり、奏さんは私から視線を逸らし、決して目を合わせることはありませんでした。
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