傾国の姫君
「そうだな。」

「そうなったら、正英だって中央で勉強できるわ。あの子、慶文に似て賢いから。」

「ふーん。」

慶文は、振って湧いた話に、少しは乗り気になってくれたようだ。


「それにしても、肝心の秦王が来る日は、いつなんだろうね。」

「そう言えばそうね。」

中央の王様が来るなんて、私達にとっては夢のような話だ。

昇龍さんは、”この国には、秦王が本当にいるのかという奴もいる”と言っていたけれど、私もその一人だ。

できるならば、その秦王に会ってみたい。

私は、ちょっとだけ、心を弾ませていた。


しばらくして、村の長から正式に、秦王がこの村を訪ねてくるというお達しがあった。

「当日は、隣の町にお泊まりになるらしい。という事は、この村はただの通過点だな。」

皆、なーんだとがっかりしていた。

「だが気を抜いたら駄目だぞ。相手は冷徹王だからな。」

「冷徹王?」

私が聞き返すと、村の長はゴホンと咳払いをした。

「少しでも無礼を働くと、殺されるらしい。」

「ひえー!」

隣の家の照葉さんは、びっくりして目が丸くなった。

「それに、気に入った女がいると、直ぐ連れ帰るらしい。」
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