Lie
遊星から貰ったと投稿した花束などは、自分で購入して遊星から贈られたように演出した。ラブラブなデート写真は、嫌がる楓を無理やり男装させて撮った。今日のお泊まりだって、ただ写真を投稿するために企画したものである。

そして、萌は遊星が現実世界に存在している彼氏であると思い込み、ずっと空想の世界に囚われていたのだ。楓の立場からすれば、本気で自分のことを彼氏だと思い込んでいる萌を見ているのは怖かっただろう。

「あなたとはもう会わない。インスタもやめる。あたし、インスタやってあなたと出会って気付いた。嘘の投稿してみんなから注目されるより、平凡でも自分らしい生き方をした方がずっと幸せだって。……だから、さようなら」

楓は振り返ることなく玄関へと向かい、静かにドアが閉まる。また萌は愛を失った。本当の愛も、偽物の愛も、萌自身を傷付けるだけだった。

「……またお別れ、言えなかった……」

その場に座り込み、泣きながら萌は呟く。その姿を、部屋に飾られた造花だけが見つめていた。





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