夜風のような君に恋をした
階段を降りてリビングに行くと、カウンターキッチンの向こうでお母さん食器を洗っていた。

黒髪のロングヘアを後ろでひとつに結んだお母さんは、私とは違って、四十半ばにしては若く見えるってよく言われている。

お母さんは暗い顔をしていたけど、私に気づくと笑顔を見せた。

雨月(うづき)、おはよう。早いわね。新学期だから張り切ってるの?」

「ぎりぎりに行くの、あんまり好きじゃないの」

「あらそう。早く着いたんなら、予習しときなさい。予習って復習なんかよりよっぽど大事よ」

「わかった、そうする」

明るく答え、ダイニングテーブルの椅子に座る。

テーブルの上には、イチゴジャムを添えたパンケーキとカットしたキウイが並んでいた。

私はとたんに、声を弾ませる。

「あ、パンケーキ」
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