気づけば君が近くにいてくれた



香純ちゃんがわざとやったわけではないことくらい、私にだってわかってる。


私が香純ちゃんの手を振り払って大きな声を出したせいで、教室に残っていたクラスメイト全員がこちらを見ていた。



「え、やば……」


「何があったの?」



一部始終を目撃していた人もいれば、声だけを聞いて何が起きているのか様子を伺う人もいた。


そんなに私のことを見ないで。


そんな目をこっちに向けないで。


もう何も見たくないの。


この邪魔で長めの前髪は、その視線を遮るための壁だから。


その壁を一瞬にして壊されて、びっくりしちゃっただけなんだ。


居心地が悪い。



「実桜ちゃん、ごめん、私……」


「……ごめん」



香純ちゃんはまだ言葉を続けようとしていたけれど、それを遮って立ち上がり、この先使うかもわからない教科書がたくさん入った重たいカバンを持って、教室を飛び出した。






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