気づけば君が近くにいてくれた



「……っ!?」


「もう大丈夫だからね。早くここから出よう」



一気に体が軽くなる。


ゆっくり首を傾けて見上げると、煙の中に消防士さんがいた。


少しだけ開いた煙の隙間から割れた窓ガラスが見える。


消防士さんは、私の部屋の窓ガラスを割って助けに来てくれていたらしい。


気づけば私を抱きしめてくれていた。


防火服に身を包んだ消防士さん。


こんな火の中に飛び込んできて、熱くないんだろうか。



「しっかり僕に掴まってね」



消防士さんが入ってきた私の部屋の窓から脱出する。


外に出た瞬間、私の部屋は炎に包まれた。


間一髪。


あと数秒逃げるのが遅れていたら……


そう思うと恐ろしくなる。


道路に降りてから、怖すぎて消防士さんの胸の中に埋めていた顔をゆっくりと上げた。


見慣れたはずの自分の家は、真っ赤になって燃えていた。



「お母さん……お父さん……ねぇ、お母さんとお父さんはどこ?」



ずっと隣にいてくれた消防士さんの服をキュッと掴んで聞いた。


どうか無事でいて欲しい。


だって、さっき聞こえたんだもん。



「今、探しているよ」


「さっき、聞こえたの。お父さんの私を呼ぶ声……」



消防士さんの言葉で、まだ2人はこの火の中から出てきていないのがわかった。


それからもずっと消防車から繋がるホースで、私の家に水をかけるばかりで、火はなかなかおさまらない。


お母さんとお父さんの姿も見つからない。


私が外に逃げてから、もうかなり時間が経った。


まだ小学4年生の幼い子どもだった私にでもわかる。


きっとお母さんとお父さんはもう──────





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