堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

30.好きです

 ジルベルトに背負われて、廃倉庫の二階から一階へと移動する。

「あの、ジル様」
 エレオノーラはくてっと右耳をジルベルトの首元にくっつけていた。
「重いですよね、すいません」

「いや、重くはない。重くはないが、むしろ……」
 抱っこよりもおんぶのほうが密着度は高いらしい。密着することで気付くこともある。背中に何やら当たるもの。

「むしろ、なんでしょうか?」
 エレオノーラに問われてしまう。

「いや、なんでもない」
 もちろん、答えられるわけなど無い。

 沈黙。ジルベルトのカツンカツンという足音だけが規則的に響く。

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